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2021/03/04

なぜ人事異動があるのか
筆者:石黒太一
 

時として、自分の思いもよらない人事異動があったりします。新入社員の配属も同じです。最近話題の「日本企業はメンバーシップ型だから様々な業務を経験したり、予想もしない異動や転勤がある」といった、メンバーシップ型・ジョブ型の話でくくることは難しいと考えています。そんな単純なことではありません。即戦力としての専門性を持った状態で新卒で入社するというのは、現実的に限られた場合によります。多くの場合は総合職として入社し、複数の業務経験からより深めていく分野に進んでいきます。このメリットは多面的な視点を持つことができるということです。営業と製造、企画と開発といった役割間でお互いの思いのぶつかるということが一般的にはよくあります。それぞれの業務経験を持つことで思いのぶつかりというものを理解し合うことができます。複数の業務を経験しているからこその、チームで成果を出していくということには多面的な視点が重要になります。あえて、デメリットを考えるなら、専門性を深めていくにあたって、中断することがあります。

営業でより高度なスキルを磨こうと考えていたら、経理に異動をする事になった。一瞬、「え?」となるかもしれません。お客様と一緒に作り上げていくことにやりがいを感じていたのに、なぜ経理なの?と感じるという例です。ここで考えておきたいことは、「異動の目的」です。異動をするということには必ず目的があります。キャリア形成において必要である、強みを横展開してほしい、新たな取り組みをする際の戦力になってほしい、など必ずといって上向きの理由があります。テレビドラマなどで左遷させるとか、窓際に追いやるとか、そんな光景を見たりしますが、実際は大切な社員にそのような扱いをすることは極々稀なのだと思います。でも、志が高ければ高いほど自分の描くキャリアがあるがゆえに、予想もしない異動などの驚きを覚えることはあるのも事実です。このとき、冷静に自分のキャリアビジョンを見直してみることが大切です。

自分で描くキャリアビジョンに押しつぶされそうになり、周囲の声や今の足元が見えなくなってしまっていることがあります。そんなタイミングで異動を命じられると、現状を否定されたような気持ちになる場合もあります。しかし、それは否定しているわけではなく、そのビジョンへの違うルートが示されているのだと考えてみてほしいのです。行き着きたい場所は大きく変わらないはずです。そこへの道がもう一本できあがってくると思ってください。夢や目標ですから、必ず道がひらけているかはわかりません。しかし、今の道が険しかったり、もうすでに力がついているのだからもっと近道があるということに気づけていないのです。コンフォートゾーンにいると、今の道が心地よかったりもします。本当はもっと早く走れたり、もっと高い山に登っていける実力があることすら見えなくなっています。異動というタイミングは自分の現状を振り返るきっかけになります。

業務の棚卸しをする機会が習慣化していない場合、ずっと仕事が積み上がっていることもあります。書類が積み上がっている机では仕事が進まないのと同じように一度整理整頓する必要があります。チームで仕事をしていると人に仕事がついていることがあります。異動のタイミングで業務の引継をすることで要らなくなった仕事を捨てることもできます。捨てることができれば新たらに成果を生み出す仕事に時間を使うことができます。だからこそ、定期的に業務や担当を変更することも大切なことになります。

予測不可能な時代と言われる現代において市場環境もお客様のニーズも変化し続けています。身につけるスキルや仕事の仕方もどんどん変化していきます。複数の業務経験の機会は、自分を磨いていくことはチャンス以外の何物でもありません。

ただし、機会を活かすかどうかは自分次第です。

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