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2021/06/03

ジョブローテーションは何のため
筆者:石黒太一
 

 
T型人材という考え方があります。Tという文字は横に線を引き最後に縦の棒を書きます。キャリアにおいても全体を理解して、その上でより専門性を深めていくということが大切ではないかと考えています。最近はジョブ型、メンバーシップ型という言葉をよく目にしますが、ジョブローテーションはメンバーシップ型の良さでもあると言えます。
 
全体を理解するということにはマネジメントにおいても重要な役割があります。「商品を企画したい」と考えるときに、作った商品はどうするのかまで考えみましょう。まずどのような商品を企画するにはお客様や消費者を知る必要があります。作り手の想いだけでは一方通行になってしまうことがあるからです。そして、どのように販売するのかを理解する必要があります。どれだけ良い商品でもお客様に使っていただいて初めて価値が発揮されます。そのためには買っていただくことを考えます。そして、どのように商品をお届けするかです。店頭で買っていただくときも、お客様が持って帰ることを想像できているか、通信販売でお届けするときに、どのような配送方法でお届けできるのかまで知る必要があります。商品を企画するということは最終的にお客様の手元に届き、使っていただき、お悩みにお応えすることです。そのためには全体を理解しなければいけません。だからこそ、複数の業務を経験することでT字の横棒を伸ばすことができます。
 
では、自分が描きたいキャリアとはどのように考えていくのでしょうか。例えば、上記の例で「商品を企画したい」と思っていたのに、販売部署に配属されるということもあります。「あー、なんで商品の企画じゃなくて、毎日何しているんだ」と思い悩むとしたらそれは、点でしか見ていないことになります。実はすべての仕事がつながっているということに気づくことが大切です。販売は市場やお客様に最も近い仕事です。コンビニの棚を見ているとわかるように、市場の変化は想像以上に早く、お客様も変化し続けています。この1年は極端な例ですが、2021年6月に大規模な会場を借りてイベントをしましょう、という企画をしても現実的には難しいこともあります。しかし、市場やお客様のことを理解していないと、頭でっかちな企画をしてしまうこともあります。だからこそ、自分が描きたいキャリア(T字の縦の棒)を持ち続けることで、今の仕事に対する取り組みかたが変わってきます。もちろん、全体を理解する中で自分の専門性をどこにおいていくかを考えることもできます。
 
計画的偶発性理論では「8割は予想しない偶発的なことによって決定される」とされています。大切なことは、目の前のことを全力で取り組み、機会は自ら作り出すことです。ジョブローテーションの中で思わぬ可能性を開花させることもあります。だから仕事って面白いんです。20代前半で描いていたものと、40代になって活躍しているフィールドが想像もしなかったということもよくあります。誰かが何かをしてくれるのではなく、主体性を持って仕事をしていると、必然的にT型人材になっていくことができます。

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