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2022/01/24

働くことについて考える(3)
筆者:石黒太一
 

面接でよく聞かれる「あなたは何がしたいですか」という問いは、働くことを考える中で最も大切なものです。
 
理想は「やりたいことがあるから仕事にする。」「やりたいことをやっていたら仕事になった。」といったことですが、そんな人ばかりではありません。多くは次のステージに変わるから何がしたいのかを必死に考えなければいけない、ということで思い悩んでいます。
 
歴史を見たときに、徳川幕府の15人の将軍の中で何人が将軍になりたくてなったでしょうか。真実は分かりませんが、結果的に将軍になった人が多かったのではないかと思っています。15代将軍徳川慶喜は最後まで拒んでいたとも言われています。時の権力者になりたくてもなれない人が多い中で、なりたくない人が結果として将軍になっていたと考えると、「自分は何がしたい」という問いは非常に悩ましいものであることもわかります。
 
自分がやりたいことがあるのか。あってもなれるのか。そもそもやりたいことすらわからないのか、その状況は人それぞれにあります。
 
その悩みをずっと考えていたら答えが出るのでしょうか。
 
それはNOです。
 
机の前に座って、何もすることなくどうしたら貯金が増えるのかなと腕組みしていることと同じことです。何もしなければ結果は変わりません。行動をするから結果出ます。そのためにはモノの見方も変える必要があります。
 
自分のやりたいこと(will)を見つけようとするから出てこないなら、自分が求められることをやってみたらそれが結果にwillになるかもしれません。
 
就職活動で自分が志望する業種や業界では全然選考が通過しないのに、他の業種・業界から選考の合格がもらえるということがあります。自分が望まないから選ばないということは、実は自分の強みや自分のwillにつながるチャンスを逃していることになっている可能性もあります。
 
徳川慶喜も将軍にはなりたくなかったけども、その才能や先見性は薩長からも恐れられるものを持っていたと言われています。結果的に大政奉還をし、徳川幕府を閉じる過程では様々な批判も受けつつも、次の時代に日本をつないだことにおいては、徳川慶喜にとっての将軍職は適職だったとも言えます。
 
 
反対にやりたいことを言い訳にしてしまうこともあります。現実逃避とも言います。「海外で働くことが夢だったのでワーキングホリデーでオーストラリアにいきます!」という方をコロナ前には見かけたことがあります。もちろん、大切な夢の一歩ですからその選択は尊重しますが、中には、現実の不満を誤魔化すために、やりたいことにしてしまっていることもあります。
 
言い訳にしたやりたいことは、すぐに満足してしまいます。環境を変えることがゴールになっていると、すぐに達成してしまい、その先に続いていかないのです。will−can−mustのwillだけがふわっと飛び出している状態です。
 
自分の気持ちに素直になることは大切ですが、やり残した宿題は必ず追いかけてきます。
 
現実逃避をしても、自分が逃げたものは後から宿題としていろいろな場面に出てくるのです。営業が苦手だから事務の仕事に変わったけど、相手のニーズを理解して提案することはどの仕事でも同じだったり、目標が売上から期日目標に変わって常に追われたりと形を変えて現れます。
 
 
自分のやりたいことが見つかるのかどうかは、いつまでも問い続けることではないかと思います。何歳になってもやりたことを見つけようとしている人は、エネルギーに満ち溢れています。見つからないのではなく、自分が何のために生かされているのかを考えることが人生そのものではないでしょうか。

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